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キャセイパシフィック航空2021年度決算を発表

キャセイパシフィック航空2021年度決算を発表

 

 

2021

2020

前年同期比

総売上高

百万香港ドル

45,587

46,934

-2.9%

純利益 (損失)

百万香港ドル

(5,527)

(21,648)

-74.5%

一株あたり利益 (損失)

香港セント

(95.1)

(424.3)

-77.6%

一株あたり配当金

香港ドル

-

-    

-

キャセイパシフィックグループ(本社:香港、最高経営責任者、オーガスタス・タン)はこのたび、2021年度(1〜12月)の決算を公表しました。決算の発表に伴う、キャセイパシフィック航空の会長、パトリック・ヒーリーによる声明は以下のとおりです。

キャセイパシフィック 会長の声明

昨年度のアニュアルレポートで、2020年は当社史上最も厳しい年であったと記しました。新型コロナウイルスが世界の航空業界にもたらした未曾有の混乱と、その後の世界各地での渡航や運航の制限は、航空ビジネスに深刻な影響を与え続けました。こうした困難にもかかわらず、2021年になると状況は改善されました。

当社の業績は通例、上期より下期が好調に推移しますが、2021年も同じ傾向を辿りました。特に下期のピークシーズンに貨物事業が例外的に好調だったことは、非常に励みとなりました。とはいえ、当社は引き続き深刻な課題に直面しており、下期の業績が大幅に改善したにもかかわらず、通期ではかなりの損失となりました。

キャセイパシフィックグループの2021年度決算における純損益は前年の216億4,800万香港ドルの赤字に対して、55億2,700万香港ドル(約818億4,300万円、1香港ドル=約14.81円)の赤字となりました。また2021年における一株あたりの損失は95.1香港セントでした(2020年は一株あたり424.3香港セントの損失)。グループの2021年下半期(7〜12月)における純損益は2021年上半期の75億6,500万香港ドルの赤字、前年同期の117億8,300万香港ドルの赤字に対して、20億3,800万香港ドルの黒字となりました。キャセイパシフィック航空の2021年下期の純損益は、33億300万香港ドルの利益(2021年上期は50億3,100万香港ドルの損失、2020年下期は100億3,200万香港ドルの損失)を計上しました。

2021年の損失には、主に退役、もしくは貸主への返却前に採算が取れる運航再開の見通しが立たない航空機12機の減損および関連費用8億3,200万香港ドル、リストラ費用3億8,500万香港ドル、中国国際貨運航空(エアチャイナカーゴ)の関連会社持分の希薄化に伴う利益2億1,000万香港ドルが含まれています。これに対し、2020年には、航空機34機(および航空サービス子会社の一部資産)に関連する減損および関連費用40億5,600万香港ドル、リストラ費用23億8,300万香港ドルが発生しました。これらの例外的な項目の調整後、キャセイパシフィックグループの2021年の純損益は45億2,000万香港ドルの赤字(前年同期:152億900万香港ドルの赤字)、キャセイパシフィックの2021年の損益は7億7,600万香港ドルの赤字(前年同期:121億9,500万香港ドルの赤字)となっています。

香港を拠点とし人々を翼で結びつけてきたキャセイパシフィックは2021年、創業75周年という重要な節目を迎えました。当社は長年にわたり、新型コロナウイルスを代表とする様々な困難を経験してきましたが、同時に素晴らしい成功も収めてきました。その歴史の中で、当社は人々を新しい目的地へとつなぎ、最新鋭の航空機を導入し、躍動的なイノベーションを打ち出してきました。香港の成長と共に当社も成長してきました。過去75年間、香港を代表する企業として、また、香港が世界有数の国際航空ハブとして成長するために貢献してきたことを、非常に誇りに思っています。

しかし、2021年は過去を振り返るだけの1年ではありませんでした。新しいプレミアム・トラベル・ライフスタイル・ブランド〝Cathay″の立ち上げにより、エキサイティングな新章を開幕しました。キャセイは、私たちが愛する旅のすべてを、日常のライフスタイルと一つにすることを目的としています。これにより、ステータスの獲得やマイルの使用方法など、お客様との関わり方をシンプルにし、フライトの時だけでなく、日々の生活でもお客様との関わりを持つことができるようになります。

また、8月には新たに購入したエアバスA321neoを就航しました。この最新鋭の旅客機は、短距離路線における世界最高レベルのフライト体験を提供します。キャセイパシフィックはすでに5機のA321neoを受領しており、2023年末までに16機を保有する予定です。

キャセイパシフィックは、2030年までに総燃料消費量の10%に持続可能な航空燃料を使用することを約束し、より環境に優しい航空の実現に向けた取り組みを続けています。また、イノベーションとコラボレーションを通じて航空業界の炭素排出をなくすという課題に取り組むために設立された新しい非営利団体、アビエーション・クライメート・タスクフォースの創設メンバーになりました。これらの取り組みは、2050年までにCO2実質排出量ゼロにするというグループの目標達成に貢献するものです。

2021年度キャセイパシフィックの業績

2021年2月に香港拠点の乗務員に厳しい検疫措置が導入され、当社の旅客事業に大きな影響を及ぼしました。継続した便の運航にあたっては、香港拠点の乗務員に対して21日間の勤務の後14日間の隔離期間を設ける、自主的なクローズドループ勤務サイクルを導入しました。これらの措置は乗務員に大きな負担を強いるものであり、非常に厳しい状況下での乗務員たちの支援と根気強いプロ意識に大変感謝しています。

運航および渡航規制は年間を通じて適用され、増便には大きな制約がありました。香港の乗務員検疫に対応するため、12月末にかけてフライトスケジュールを縮小し、新型コロナウイルス以前の乗客定員数に対し計画より大幅に下回る運航で1年を終えました。

2021年を2020年全体と比較すると、2020年の最初の2ヶ月が新型コロナウイルスの影響を完全に受ける前に比較的好調だったことが大きく、2021年の業績は全体的に弱含みとなりました。2021年の旅客事業による売上高は、前年比61.6%減の43億4,600万香港ドルでした。有償旅客キロ(RPK)は79.5%減、有効座席キロ(ASK)で測定されるキャパシティは61.8%減となりました。輸送旅客数は71万7千人、1日平均1,965人で、2020年に比べて84.5%減少しました。有償座席利用率は2020年の58%に対して31.1%でした。

貨物事業は例外的に好調に推移しました。2021年の貨物事業による売上高は前年比31.8%増の323億7,700万香港ドルとなりました。貨物の輸送実績を示す有償貨物トンキロ(RFTK)は1.1%、輸送能力を示す有効貨物トンキロ(AFTK)は10.9%、それぞれ低下しました。貨物搭載率は8.1ポイント増の81.4%となり、イールド(貨物1トンの1キロメートル輸送あたりの収入)も33.1%増の、3.94香港ドルになりました。

貨物需要は、下半期に従来の繁忙期を前にして伸びました。2021年末までの数ヶ月間、当社は貨物機をピーク時の容量で運航し、貨物専用の旅客便の追加運航で貨物容量を補完しました。また、ボーイング777-300ER型旅客機6機を、客室の座席を一部取り外して貨物積載量を増やす「プレイター」に改造して運航しました。10月には、新型コロナウイルスの開始以来、単月で最も多い13万6,000トンの貨物を輸送しました。新型コロナウイルスの開始以来、当社は1億9,000万以上の新型コロナウイルスワクチンを輸送しました。

効果的なキャッシュ・マネジメントとコスト・マネジメントに引き続き注力しました。役員報酬を2021年通期で削減し、8割の従業員が、3度目の導入となった無給休暇制度を自主的に受け入れました。一時帰休、無給休暇、自主退職、早期退職などの制度を、多様な従業員グループを対象に世界的に導入しました。これらの制度に参加してくれた、すべての従業員に心から感謝しています。2021年全体として、燃料以外のコストは24.4%減の377億800万香港ドルとなりました。総燃料費(燃料ヘッジによる影響を受ける前)は、前年比で9億2,700万香港ドル(11.9%相当)増加しました。 これは、燃料価格の上昇を反映したものです。

関係会社と子会社の業績

香港エクスプレス航空は2021年、19億7,800万香港ドルの損失を計上しました(2020年は17億2,300万香港ドルの損失)。これは渡航需要の全般的な低迷、当社の香港ベースの乗務員にも影響を及ぼした、新型コロナウイルス関連の渡航制限および検疫施策による大きな影響を受けた結果です。

エアホンコンは2021年、貨物需要が好調であったことから、利益を記録しました。貨物専門航空会社である同社は、キャセイパシフィック用に臨時便の運航も行いました。

航空サービスを担う子会社の事業成績は2020年を上回る結果となりました。

中国国際航空の業績(3ヶ月遅れで反映)はコロナ禍による多大な影響を受け、2020年を下回るものでした。

財務状況

予想以上に好調であった貨物部門の業績に加え、断続的に効果的なキャッシュフローとコスト管理に注力したことで毎月の現金流出(キャッシュバーン)に改善が見られました。2021年の上半期には、わずかながらではありますが、キャッシュインフローの状態にまで回復しました。

2021年12月31日の時点での当社が利用可能な制限無し流動資産は、303億香港ドルでした。当年度中に、転換社債発行から67億香港ドル、MTNプログラムに基づいて発行した普通社債を通じて6億5千万米ドル(51億香港ドルに相当)を追加調達しました。

2020年には資本増強策の一環として、香港特別行政区政府から78億香港ドルの融資枠を確保しましたが、融資枠の行使期間を2022年6月まで12か月延長することで同政府との合意に至りました。これにより、流動性をより柔軟に管理できるようになりました。

今後の見通し

2022年は非常に困難なスタートとなりました。オミクロン株の出現に伴い、香港特別行政区政府は香港を拠点とする乗務員、特に貨物便の運航乗務員に対する検疫ルールを厳格化し、さらには当社にとって大変重要な市場であるイギリスやアメリカを含む9か国からすべての便の乗り入れを一時的に禁止しました。感染リスクの高い国や地域からの乗客は、香港国際空港での乗り継ぎも禁じられました。これらの規制措置は、当社の運航計画を大幅に制限することとなります。結果として、現状の措置が解除されない限り、当社ではコロナ禍以前のわずか2%程度の旅客輸送能力での運航を続け、貨物の輸送能力もコロナ禍以前の1/3以下のレベルに留まることとなります。当社では、可能な限り旅客便および貨物便のネットワークを維持するために最善を尽くしており、貨物輸送能力を最大限増加できるよう努めてまいります。

香港は現在、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおける大変困難な局面を迎えていますが、感染拡大による影響を受けた香港中のすべての人々に対し、私個人から共感と懸念を表したいと思います。パンデミックの初期、海外在住の香港の人々が無事に帰国できるよう、キャセイパシフィックの乗組員達は、勇敢にも救済フライトを運航することを志願しました。最近では食料、医薬品、ワクチンや簡易抗原検査キットを輸送し、感染拡大対策をサポートすべく関係各社と協力することなどを通じ、香港の街の支援に向けた最大の努力を払っています。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは厳しい市場環境をもたらしましたが、香港のホームエアラインとして当社は、香港と世界の様々な地域との間の人と貨物の流れを安全に確保し、香港の主要ハブ空港としての地位を保持し、さらに強化できるよう敢然に取り組んでいます。 私たちは香港の長期的な都市としての将来に絶対的な自信を持っています。キャセイパシフィックが企業として展開することは、すべて香港のためとも言えます。当社は過去75年以上にわたり、終始一貫して、事実上のフラッグキャリアとしての誇りを持って、香港という都市への運航を続けてきました。

当社では昨年、新たなプレミアム・トラベル・ライフスタイル・ブランド”Cathay”を立ち上げましたが、今後も新たなサービスの開発に取り組み、より多くのお客様に弊社のフライトをご利用いただいたり、ショッピングを楽しんでいただいたり、当社と交流する機会を創造できるよう心がけてまいります。また、「持続可能な航空業界」の達成に向け、2050年までにCO2実質排出量ゼロにむけた努力を継続するほか、航空業界をリードする、デジタルサービスの拡充に努めてまいります。グレーターベイエリア(粤港澳大湾区)の経済成長および、香港国際空港に誕生する3本目の滑走路がもたらすビジネスチャンスも最大限に活用できるようなポジションも保持していく予定です。

多くの課題に直面している状況に変わりはありませんが、私達はキャセイパシフィックの長期的な将来に絶対的な自信を持っています。当社は過去75年間にわたり、ホームエアラインとしての誇りを持って香港からの運航を続けてきましたが、その歴史が証明するように、辛抱強いエアラインなのです。

最後に、この大変に困難なビジネス環境において、オペレーションを継続できるよう弛まぬ努力を続けてくれている社員の全員に、心より感謝の意を表します。特に、世界のどの航空会社にとっても最も困難な状況下においても、香港を世界と安全につなぎ続けられるよう働いてくれた乗務員には大変感謝しています。2021年を通じ、当社の乗務員は合計62,000泊以上を検疫のための隔離ホテルで過ごしました。また、多くの乗務員を含む、顧客サービス部門、オペレーション部門、本社などからの1,000人を超える社員が、ペニーズ・ベイ(竹篙湾)の隔離施設にて合計11,000泊以上を過ごしました。当社の乗組員は全員ワクチン接種を完了していることもあり、世界で最も感染リスクの高い多くの国や地域へ定期的に飛行したにも拘らず、2021年中に受けた23万回以上の新型コロナウイルス関連の検査のうち、陽性と診断されたのはわずか16件でした。年間を通じて、安全な運航を継続するために、彼らが示したプロ意識はまさに比類のないものでした。

2022年3月9日

キャセイパシフィック航空 会長

パトリック・ヒーリー