キャセイパシフィック航空2020年度決算を発表
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| 2020年 | 2019年 | 前年同期比 |
総売上高 | 百万香港ドル | 46,934 | 106,973 | -56.1% |
純利益 (損失) | 百万香港ドル | (21,648) | 1,691 | -23,339 |
一株あたり利益 (損失) | 香港セント | (424.3) | 39.1 | -463.4 |
一株あたり配当金 | 香港ドル | - | 0.18 | -100.0% |
キャセイパシフィックグループは本日、2020年度(1〜12月)の決算を発表しました。キャセイパシフィック航空のパトリック・ヒーリー会長による声明は以下のとおりです。
キャセイパシフィック会長の声明
キャセイパシフィックグループにとって2020年は70年以上におよぶ歴史において最も困難な一年となりました。新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、世界各国で課された渡航制限や検疫要件は国際航空旅行市場にかつてない困難な状況をもたらすなど甚大な影響をおよぼしています。国際航空運送協会(IATA)では、国際旅客需要が新型コロナウィルス流行前の水準にまで回復するには2024年までかかるだろうとの見通しを示しています。
キャセイパシフィックグループの2020年度決算における純損益は前年の16億9,100万香港ドルの黒字に対して、216億4,800万香港ドル(約3,121億6,416万円、1香港ドル=約14.42円)の赤字となりました。また2020年における一株あたりの損失は424.3香港セントでした(2019年は一株あたり39.1香港セントの利益)。2020年下半期(7〜12月)における純損益は2020年上半期の98億6,500万香港ドルの赤字、前年同期の3億4,400万香港ドルの黒字に対して、117億8,300万香港ドルの赤字となりました。キャセイパシフィック航空とキャセイドラゴン航空の2社を合わせた2020年下半期の純損益では100億3,200万香港ドルの損失(2020年上半期は73億6,100万香港ドルの損失、2019年下半期は4億3,400万香港ドルの損失)を計上しました。
2020年の損失には各国政府から受け取った新型コロナウィルス関連の補助金の総額26億8,900万香港ドル、退役やリース期間満了まで採算に見合う運航の再開が見通せず航空サービス関連子会社の資産としても一定の価値を見出せない航空機34機の減損処理に伴う費用40億5,600万香港ドル、キャセイドラゴン航空の繰延税金資産の減損処理15億9,000万香港ドルを含めた事業再編関連費用39億7,300万香港ドルが計上されました。
2020年6月には390億香港ドル規模の資本再編計画を発表しましたが、香港特別行政区政府と株主による重大な局面での資本再編に向けた支援には深く感謝しています。
また2020年10月には、年末までに約8,500人のポストを削減しキャセイドラゴンを運航停止とする事業再編措置を発表しました。さらに香港を拠点とする運航乗務員と客室乗務員に対しては市場競争力がある新たな雇用契約への移行を提案し、98.5%の運航乗務員と91.6%の客室乗務員がこれに同意しました。
約24億香港ドルを費やした事業再編に伴い、毎月の現金流出は15億~20億香港ドルから10億~15億香港ドルへと、5億香港ドル程度改善されました。
キャセイパシフィックとキャセイドラゴンの事業業績
新型コロナウィルスの流行に伴い、2020年の旅客事業による売上高は前年の2~3%にとどまりました。これまでにない水準へと落ち込んだ需要に対応するため、旅客便の運航便数は最小限のレベルまで大幅に削減し、輸送能力はほぼ通年で10%を下回りました。香港および中国大陸からイギリスやヨーロッパの各都市への学生の渡航が夏期に活況を呈するなど、一時的な需要は見られたものの、年間においてのピークシーズンであるはずの夏も2020年は大変厳しいものとなりました。
2020年の旅客事業による売上高は前年比84.3%減の113億1,300万香港ドルにとどまり、有償旅客キロ(RPK)は85.1%減、有効座席キロ(ASK)は78.8%減となりました。この結果、座席占有率は10月に18.2%まで落ち込むなど、通年では24.3%ポイント低下して58.0%となりました。イールド(旅客1人の1キロメートル輸送あたりの収入)は4.8%上昇して56.3香港セント、輸送旅客人数は前年を86.9%下回るまで減少しました。
貨物事業では通常の旅客機の貨物室を利用した輸送能力が大幅に縮小されたことによる影響はあったものの、旅客事業をはるかに上回る業績を収めました。航空貨物市場における需給バランスの不均等に伴い、イールド(貨物1トンの1キロメートル輸送あたりの収入)と売上は押し上げられるかたちとなりました。またキャセイパシフィックの全額出資航空会社である貨物専門エアライン、AHKエアホンコンからのチャーター便の運航、貨物のみを搭載した旅客便の運航、一部の旅客機における客室を利用した特定貨物の輸送、4機のボーイング 777-300ER型機でのエコノミークラス客室内からの一部の座席を取り外すことによる貨物スペースの増強などによって、貨物輸送能力の拡大を行いました。
2020年の貨物事業による売上高は市場における需給バランスの不均等を反映し、前年比16.2%増の245億7,300万香港ドルとなりました。貨物の輸送実績を示す有償貨物トンキロ(RFTK)は26.5%、輸送能力を示す有効貨物トンキロ(AFTK)は35.5%、それぞれ低下しました。貨物搭載率は8.9%ポイント増の73.3%となり、イールド(貨物1トンの1キロメートル輸送あたりの収入)も58.3%増の2.96香港ドルに上りました。
現金流出を減らすための措置として輸送能力の削減、設備投資の先送り、必須でない支出の停止、雇用の凍結、経営陣の給与カットなどが講じられました。また従業員には2度にわたって特別休暇の自主的な取得を呼びかけ、1、2回目で取得率がそれぞれ80%と90%に達しました。
2020年における燃料費(燃料ヘッジによる影響を除く)の総額は前年から208億8,100万香港ドル(72.8%に相当)減少。また、燃料使用量の大幅減と燃油価格の急落に伴う燃料ヘッジの損失を加味した燃料費も前年から180億6,800万香港ドル(62.8%に相当)減少しました。燃料費を除く有効トンキロあたりの運航コストは増加しました。
香港国際空港に駐機していた82機の旅客機(保有旅客機全体の46%)は、オーストラリアのアリス・スプリングスやスペインのシウダー・レアルなど香港外の駐機場所へと移されました。航空機の駐機という観点においてこれらの場所は香港より適切な環境にあります。
エアバス社とは、2020〜2021年に予定されていたA350-900型機とA350-1000型機の受領を2020〜23年へ先送りするとともに、A321neo型機の受領は2020〜2023年から2020年〜2025年へ延期することで合意に至っています。ボーイング社とも777-9型機の受領の先送りに関する事前交渉を進めています。 2020年には11月に受領したエアバスA321neo型機の初号機を含め計10機の航空機を受領することで、運航機材の最新鋭化を進めるとともに運航効率の向上を図りました。
関連会社と子会社の事業業績
香港エクスプレス航空は、2020年に17億2,300万香港ドルの損失を計上しました。新型コロナウィルスの感染拡大とアジア各国での政府による渡航規制に起因する旅客需要の急激な減退により、3月23日から8月1日までの期間に全便運航停止を余儀なくされるとともに、10機の運航機材の駐機場所をオーストラリアのアリス・スプリングスへ移しました。
コロナ禍での顕著な航空貨物需要に伴い、エアホンコンでは前年比で業績改善が見られました。
航空サービスを担う子会社における事業業績は旅客および貨物の輸送量減少の影響を受け、総じて前年を下回る結果となりました。これに伴い、ヴォーグ・ランドリー・サービスとキャセイパシフィック・ケータリング・サービスの保有資産にかかる減損として合計11億8,400万香港ドルが計上されました。また中国国際航空の業績(3ヶ月遅れで反映)も新型コロナウィルス感染症によるマイナス影響を受けて、前年を下回る結果となりました。
今後の見通し
市場の状況は依然として厳しくかつ流動的で、感染とそれに伴う影響が今後数ヶ月間どうなるのかの見通しを立てることは困難な状況が続いています。
香港特別行政区政府は香港を拠点に乗務する運航乗務員と客室乗務員に対する検疫措置を2021年2月20日から強化しています。この新たな検疫措置により、輸送能力を旅客便で約60%、貨物便でおよそ25%とそれぞれ2021年1月時点の水準より縮小せざるを得ず、10億~15億香港ドル程度だった毎月の現金流出がさらに3億~4億香港ドルほど膨らむ状況となっています。
手元に現金を保持するための措置は継続されるとともに、経営陣の給与カットも2021年末まで続けられます。また香港では全ての地上職員、そして香港以外の世界各地の従業員に対して、2021年上半期末までに3回目となる特別休暇の自主的な取得を呼びかけ、80%を上回る取得率が得られました。
2020年12月31日時点では286億香港ドルの制限付でない流動資金が確保されていましたが、厳しい状況において更なる流動資金を確保するため、2026年に償却期限を迎える総額67億4,000万香港ドルの転換社債を今年これまでに発行しました。
昨年末の時点で2021年上半期における旅客輸送能力はコロナ流行前の水準の4分の1を下回る程度にとどまり、下半期には改善が期待されるとの見通しを示しました。これは2021年夏までにワクチン接種が主要マーケットへ広く行き渡ることによる効果を想定した上での予測ですが、2021年の旅客輸送能力は通年で50%を回復するまでに至らないことが見込まれていました。これらの見通しの大半は現状においても妥当であると考えています。主要マーケットでのワクチン接種の浸透と、将来的な旅行規制措置の緩和との相関性については極めて不透明で予測が困難です。私たちは今後も状況の進展に応じて、機敏に対応できる態勢の維持に努めてまいります。
キャセイパシフィック・カーゴではスピードと高度な管理態勢、特殊な取り扱いなどが求められるワクチン輸送に適した次世代の貨物ソリューションによる新型コロナワクチンの輸送をすでに手がけており、世界各地への迅速かつ効果的なワクチンの供給に寄与しています。
短期的見通しは依然として厳しいものではありますが、長期的な観点からキャセイパシフィックグループが今後も競争力を備えた地位を維持していくと確信しています。国際航空輸送拠点である香港においてキャセイパシフィックグループが中心的役割を果たしており、グレーターベイエリア(中国・広東省と香港、マカオを結ぶベイエリア)とその先の広域においては香港が重要な役割を担っていることは、コロナ収束後の回復と再建への過程においてキャセイパシフィックにとって大きな助けになると確信しています。
最後になりますが、先例のない試練に直面する国際航空業界において、卓越したプロ意識と困難に負けない強さを決して忘れることのないキャセイパシフィックグループの社員全員に、心から感謝の意を表します。
2021年3月10日
キャセイパシフィック航空 会長
パトリック・ヒーリー