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キャセイパシフィック航空2020年度上半期決算を発表

キャセイパシフィック航空2020年度上半期決算を発表

 

 

 

2020年上半期

2019年上半期

前年同期比

総売上高

百万香港ドル

27,669

53,547

-48.3%

純利益(損失)

百万香港ドル

(9,865)

1,347

-11,212

一株あたり利益(損失)

香港セント

(250.8)

34.2

-285.0

一株あたり配当金

香港ドル

 

0.18

-100.0%

 

キャセイパシフィックグループは、2020年度上半期(1〜6月)の決算を発表しました。キャセイパシフィック航空のパトリック・ヒーリー会長による声明は以下のとおりです。

 

キャセイパシフィック航空 会長の声明

 

2019年下半期の業績は香港の社会情勢に影響を受けたものの、旅客需要に回復の兆しが見られた年初は幸先の良いスタートが切れましたが、2020年上半期キャセイパシフィックグループは創業70年以上の歴史において最も困難な状況に置かれることとなりました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大はグループの業績はもとより、世界経済全体にかつてないほど過酷な試練を与えています。世界的な健康危機に伴い旅行産業は深刻な打撃を受けるとともに、先行き不透明な状況が続く中で多くの専門家は新型コロナウイルス感染症による危機前の水準に回復するまでには数年を要すると見込んでいます。

前例のない状況に対応するため、キャセイパシフィックは2020年6月、195億香港ドルの優先株の発行(ワラント付)、117億香港ドルの株主割当(ライツ・イシュー)増資、78億香港ドルのつなぎ融資から成る、合わせて総額390億香港ドルの資本増強計画を発表し、2020年8月12日には計画通り実行されました。航空輸送拠点としての香港の発展を牽引し続けるキャセイパシフィックに対して信頼を寄せ、今回の資本増強を支援してくださった株主各位、また香港特別行政区政府に対して、グループを代表して感謝の意を表します。

キャセイパシフィックグループの2020年上半期決算における純損益は、前年同期の13億4,700万香港ドルの黒字に対して、98億6500万香港ドル(約1358億4100万円、1香港ドル=約13.77円)の赤字を計上しました。キャセイパシフィック航空とキャセイドラゴン航空の2社を合わせた税引後当期純損益は、2019年上半期の6億7,500万香港ドルの黒字に対して73億6100万香港ドルの赤字となりました。また子会社および関連会社からの分配も前年同期の6億7,200万香港ドルの利益に対して25億400万香港ドルの損失となりました。

2020年上半期の収支には、新型コロナウイルス感染症にまつわる各国政府からの助成金10億6000万香港ドル、退役もしくは貸主への返却前に採算が取れる運航再開の見通しが立たない航空機16機と航空サービスを担う子会社の保有資産に係る減損損失24億6500万香港ドルが加味されています。

 

キャセイパシフィックとキャセイドラゴンの事業業績

2020年上半期の旅客事業による売上高は、前年同期比72.2%減の103億9600万香港ドルにとどまり、有償旅客キロ(RPK)は72.6%減となりました。売上の減少は新型コロナウイルスの感染拡大防止のために実施されている世界各国・地域での渡航規制や出入国制限、検疫措置に伴う旅客需要の減退を反映しています。2020年上半期における総輸送旅客人数は前年同期比76.0%減の440万人で、座席占有率も前年同期の84.2%から67.3%へと低下。4月と5月における1日あたりの平均旅客数は500人程度にまで落ち込みました。

2020年上半期には輸送能力を大幅に縮小し、2月は29%、3月は73%、4月と5月には97%、それぞれ削減。香港におけるコロナウイルス感染の沈静化と香港国際空港での乗り継ぎ規制の緩和に伴い、6月には輸送能力を徐々に増やし始めたものの、2020年上半期の有効座席キロ(ASK)は前年同期比で65.7%低下しました。

一方で貨物事業のイールド(貨物1トンの1キロメートル輸送あたりの収入)は44.1%増の2.71香港ドルに上昇。航空貨物市場における需給バランスの不均衡が2020年上半期の利益を押し上げる格好となりました。旅客便の大幅減を反映して輸送能力を示す有効貨物トンキロ(AFTK)は31.0%低下したものの、2020年上半期の売上高は前年同期比8.8%増の111億7700万香港ドルとなりました。通常、貨物量の約半分は旅客機下部の貨物搭載スペースで輸送されていることから、輸送貨物重量は31.9%減の66万7000トンにとどまりましたが、貨物搭載率は5.9%ポイント増の69.3%に上昇しました。

貨物輸送能力を可能な限り増やし、貨物専用機の稼働率は向上しました。また、グループ子会社であるエアホンコンの貨物専用機を利用した貨物チャーター便の運航に加えて、3月から6月にかけてはキャセイパシフィックおよびキャセイドラゴンの旅客機を活用した貨物便を往復ベースで計2,228本運航しました。また4月末にはボーイング777-300ER型機の客室を利用した貨物輸送を始めたことで、貨物輸送能力はさらに5〜9%増強されました。

2020年上半期におけるキャセイパシフィックとキャセイドラゴンの燃料費(燃料ヘッジによる影響を除く)の総額は、航空機に使う平均燃料価格が22.4%下落するとともに燃料消費量の51.8%減少を反映し、前年同期から90億6900万香港ドル(62.8%に相当)下がりました。ただし燃料費の大幅減による恩恵は、固定量燃料ヘッジに伴う損失と相殺され、飛行距離も大幅に減少したことから限定的なものとなりました。燃料ヘッジによる影響を加味した燃料費は、前年同期から76億4000万香港ドル(52.6%に相当)下がり、有効トンキロあたりの燃料消費量も8.5%減少しました。

為替変動と減損損失を含む特別項目による影響を差し引いた際の燃料費を除いた有効トンキロあたりのコストは、運航便数が削減されても固定費と準変動費の負担は残ることから、34.1%増の2.99香港ドルとなりました。輸送能力の大幅削減をはじめ経営幹部の減給、2回にわたって自主的な取得を求めた特別休暇(取得率は1回目が80%、2回目は90%)、プロジェクトの中止や必須ではない支出の凍結、取引条件に関するサプライヤーからの譲歩の引き出し、香港以外の乗務員ベースの閉鎖など、手元に現金を残すために数多くの措置を講じました。エアバス社とは、2020と2021年に予定されていたA350-900型機とA350-1000型機の受領を2020〜23年へ先送りすることで、またA321neo型機は2020年~2023年の受領予定から2020年~2025年に先送りすることで合意に至っており、ボーイング社ともB777-9型機の受領計画の変更に関する事前交渉を進めています。受領を先送りすることによってキャセイパシフィックグループでは短中期的な現金の節約が見込まれています。

 

関連会社と子会社の事業業績

子会社の業績の貢献度は、ヴォーグ・ランドリー・サービス社とキャセイパシフィック・ケータリング・サービス社の保有資産に係る減損損失などにより、全般的に低調なレベルに止まりました。

香港エクスプレスは、新型コロナウイルスの感染拡大と渡航規制を受けて3月半ばに運航を全面的に停止し、最近になってようやく一部の路線で運航を再開しましたが、2020年上半期決算で多額の損失を計上しました。

エアホンコンは2020年上半期決算で黒字を確保。前述のとおり航空貨物市場で需給が逼迫し、同社の貨物専用機はグループ全体の貨物輸送能力増強に寄与しました。

中国国際航空の決算に伴う配当(2020年6月30日時点でキャセイパシフィックグループは18.13%の株式を保有)は3カ月遅れで決算書に表れることから、2020年上半期決算には、中国国際航空の2020年3月期の半期決算に2020年4月1日から6月30日までに発生した重要な出来事や取引の影響を加味した内容が反映されています。ただし、これには2020年4月1日から6月30日の期間の新型コロナウイルス感染症による中国国際航空への影響は含まれていません。中国国際航空の2020年3月末までの6カ月の業績は悪化しました。

中国国際貨運航空は、2020年上半期決算で前年同期に対し増益を記録しています。

 

今後の見通し

国際航空運送協会(IATA)では新型コロナウイルス感染症による危機の影響により、2020年における旅客収入は前年比61%減の3710億米ドルまで落ち込み、航空業界の損失額は840億米ドルに達するとの見通しを発表しています。なかでもアジア太平洋地域の航空会社への影響は最も甚大で、290億米ドルの損失と前年比54%減までの旅客需要の落ち込みが見込まれています。多くの業界アナリストは、需要の回復が長期にわたって非常に緩やかなものに止まるとの見通しを示しており、IATAは国際航空旅客の需要が新型コロナウイルス感染症のもたらした危機前の水準に戻るのは早くて2024年との予測を明らかにしています。さらに世界的な景気後退や地政学的緊張の高まり、貿易活動への下方圧力などが旅客と貨物の航空輸送需要にマイナス影響をおよぼすとの観測が示されています。航空業界を襲った今回の新型コロナウイルス感染症による危機は、これまでにキャセイパシフィックが直面した中で最も厳しい試練となっており、しばらくは旅客事業の業績回復は期待できない状況が続くものの、需要の動向を注視しながら旅客便の運航再開を進めてまいります。

キャセイパシフィックの経営陣は2020年度の第4四半期(10〜12月)までに、株主に対する責任を果たしつつ、香港の旅客需要に見合ったグループの適切な事業規模と陣容を取締役会で提案する準備を進めています。新型コロナウイルス感染症がもたらした危機以前に策定した運航計画を、市場観測とコスト構造を考慮しながら、今後合理的に調整していきます。

2020年8月12日

キャセイパシフィック航空 会長

パトリック・ヒーリー