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キャセイパシフィック航空2019年度決算を発表

キャセイパシフィック航空2019年度決算を発表

 

 

2019年

2018年

前年同期比

総売上高

百万香港ドル

106,973

111,060

-3.7%

純利益

百万香港ドル

1,691

2,345

-27.9%

一株あたり利益

香港セント

43.0

59.6

-27.9%

一株あたり配当金

香港ドル

0.18

0.30

-40.0%

 

キャセイパシフィックグループは、2019年度の決算を発表しました。キャセイパシフィック航空の会長である パトリック・ヒーリーの声明は、以下の通りです。

 

キャセイパシフィック航空 会長による書簡

 

概要

キャセイパシフィックグループにとって2019年は試練の年でした。地政学的緊張の高まりと貿易摩擦の深刻化がもたらした困難な状況下、企業改革に向けた3カ年計画の成果が現れ始めたことで2019年上半期には好業績を残すことができました。しかし2019年下半期に入ると、香港における社会情勢の不安の高まりと米中貿易摩擦の激化により、香港はインバウンド、アウトバウンドの両方で旅客数は大幅な減少となりました。香港経済の不況入りに伴い、事業環境は大変厳しいものとなり、上半期を上回るのが通例である下半期の業績は期待におよばぬ結果となりました。

 

キャセイパシフィックグループの2019年度(1〜12月)決算における純利益は、前年の23億4500万香港ドルから16億9100万香港ドル(約228億2850万円、1香港ドル=約13.5円)へと減少しました。2019年における一株あたりの利益は、前年の59.6香港セントから43.0香港セントにとどまりました。2019年下半期(7〜12月)の純利益は3億4400万香港ドルで、2019年上半期(1〜6月)の13億4700万香港ドル、2018年下半期の26億800万香港ドルにはおよびませんでした。キャセイパシフィック航空とキャセイドラゴン航空の2社を合わせた2019年下半期の純損益は、2019年上半期の6億7500万香港ドル、2018年下半期の12億5300万香港ドルの黒字に対して、4億3400万香港ドルの赤字となりました。

 

旅客単価と貨物単価は年間を通してともに下向きの圧力を受け、2018年を下回る結果となりました。2019年下半期は香港での抗議活動により、予約状況が低迷するとともに座席占有率と輸送旅客人数が著しく減少しました。とりわけ近距離路線と中国大陸路線の香港へのインバウンド旅客への影響が大きく、香港からのアウトバウンド需要も低調が続きました。また上級クラスでの旅客需要の低迷に伴い、イールド(旅客1人の1キロメートル輸送あたりの収入)の比較的低い乗り継ぎ旅客への依存傾向が強まりました。2019年の輸送旅客人数は前年比0.7%減となりました。

 

貨物需要は米中貿易摩擦の影響により通年で低調が続き、前年を大きく下回りました。しかしながら、従来の繁忙期にあたる2019年後半には新商品や特殊航空貨物、ホリデーシーズン前の在庫補充に起因する回復が見られました。中国大陸と香港からの北米・中米と欧州向け航空貨物市場は2019年後半に入って持ち直す動きが見られました。

 

香港国際空港の国際航空貨物の輸送拠点としての競争力向上を図るため、昨年12月にキャセイパシフィックグループと香港空港管理局は、2020年4月1日より適用となるターミナルサービス料金の値下げを発表しました。割引率は18%から20%強で、グループ航空会社全4社によって輸送される香港からの貨物が対象となります。

 

燃料価格の低下に伴う利益押し上げ効果がほぼ通年で得られた反面、米ドル高が利益を押し下げる格好になりました。企業改革計画による生産性の向上と業務効率化が功を奏し、燃料費を除いた有効トンキロあたりの事業コストは2.7%削減されました。

 

キャセイパシフィックは2019年7月にLCC(ローコストキャリア)である香港エクスプレス航空の買収を完了し完全子会社化しました。11月にはグループが保有する旅客機運用の最適化に向けた取り組みの一環として、計32機を発注しているエアバス A321-200neo型機の半数に相当する16機について、香港エクスプレスが2022年より受領を開始する計画を発表しました。

 

2019年5月には、サービス向上とお客様の期待を常に上回ることへの決意を示す「Move Beyond」をテーマとした新ブランドキャンペーンを始動しました。2019年下半期は様々な困難に直面したものの、近年で最大規模となるサービス刷新を図りました。具体的には機内エンターテイメントのコンテンツ大幅増強をはじめ、ファーストクラスおよびビジネスクラスにおける寝具とアメニティー類の刷新や機内食メニューの拡充、香港発長距離路線のエコノミークラスにおける機内食の充実、上海浦東国際空港のラウンジの全面リニューアルなど、お客様に選んでいただけるエアラインであり続けるための取り組みです。

 

キャセイパシフィックとキャセイドラゴンの事業業績

2019年の旅客事業による売上高は前年比1.3%減の721億6800万香港ドルを計上しました。当初の目標にはおよばなかったものの、有償旅客キロ(RPK)は2.9%、有効座席キロ(ASK)5.1%とそれぞれ増加しました。座席占有率は1.8%ポイント減の82.3%となり、イールド(旅客1人の1キロメートル輸送あたりの収入)は米ドル高や競争激化、2019年下半期における香港情勢の不安定化に伴う旅客の減少などを背景に3.9%減の53.6香港セントとなりました。香港へのインバウンドおよび香港からのアウトバウンドの旅客は特に近距離の中国大陸路線で8月から12月にかけて大幅に減少する一方で、香港情勢による影響が少なかったイールドが比較的低い乗り継ぎ客への依存傾向が強まりました。この間における上級クラスでの需要も低調が続きました。

 

厳しい状況を緩和するため、10月には10路線以上で冬期スケジュールでの減便や香港/メダン線の運休といった短期的対策を講じました。さらに生産性の向上と経費削減の実現に向けた支出の精査を実施すると同時に、新規採用を凍結し、優先プロジェクトの選定や支出の見直しなどを図りました。

 

2019年の貨物事業による売上高は前年比14.2%減の211億5400万香港ドルで、貨物の輸送実績を示す有償貨物トンキロ(RFTK)は6.7%、輸送能力を示す有効貨物トンキロ(AFTK)は0.3%、それぞれ低下しました。その結果、貨物搭載率は4.4%ポイント減の64.4%となり、イールド(貨物1トンの1キロメートル輸送あたりの収入)も米ドル高と米中貿易摩擦の激化に起因する貨物需要の低迷に伴って7.9%減の1.87香港ドルにとどまりました。

 

2019年におけるキャセイパシフィックとキャセイドラゴンの燃料費(燃料ヘッジによる影響を除く)の総額は、前年から31億1000万香港ドル(9.8%に相当)減少しました。燃料価格が低下する一方で、飛行距離は増加しました。燃料ヘッジによる損失を加味した燃料費も前年から44億5400万香港ドル(13.4%に相当)減少しましたが、燃料費は依然としてグループ最大のコスト要因であり、2019年における事業コスト全体の28.4%(2018年は31.4%)を占めています。

 

生産性向上と業務効率化の実現に伴い、燃料費を除いた有効トンキロあたりの事業コストは僅かながら削減されました。

 

2019年中には6機のエアバス A350型機を含む燃料効率に優れた新機材の受領を継続し、これまでにエアバス A350-900型機を24機とエアバス A350-1000型機12機の導入を済ませています。また中古のボーイング 777-300型機を3機受領する一方で、ボーイング 777-200型機を3機退役させるとともに、リースしていたエアバス A330-300型機を4機とボーイング 777-300ER型機を1機、貸主へ返却しました。

 

関連会社の事業業績

香港エクスプレスは若干の利益が見込まれていましたが、買収後に香港情勢の不安定化に伴うアジア地域での需要減が響き、損失を計上しました。

 

エアホンコンの決算に伴うキャセイパシフィックへの株主配当は前年を上回るものとなりました。エアホンコン株式に占めるキャセイパシフィックの持ち株比率は、2018年の60%から2019年には100%となりました。2018年に航空機の売却による利益が計上された一方で、2019年には新たなブロックスペース契約の締結や貨物輸送能力および輸送量の減少などが影響し、エアホンコンの利益は対前年同条件で縮小しました。

 

航空サービスを担う子会社における事業業績は、事業量の低下とコスト上昇圧力の影響により、総じて前年を下回る結果となりました。

 

中国国際航空の決算に伴う株主配当(3ヶ月遅れで反映)は、僅かな改善が見られたものの、中国国際貨運航空の業績は、貿易摩擦の激化による輸送量とイールドへのマイナス影響と、貨物ターミナルにおける貨物処理能力の低下を受けて大幅に悪化しました。

 

今後の見通し

2019年後半に入ってからの香港情勢の不安の高まりに続き、2020年上半期は冬期スケジュールにおける減便措置により、財政的に極めて厳しくなることが予想されます。また新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大による影響が甚大で、状況を一層悪化させています。このような状況がいつ改善されるのかを予想するのは難しく、旅行需要の著しい減退を受けて旅客便の大幅な減便をはじめとした様々な短期的措置を講じています。しかし、こうした取り組みをしても、2020年上半期には大きな損失を避けられない状況が予想されています。

 

今年、旅客事業は非常に大きなプレッシャーにさらされており、貨物も逆風が続くことが予想されています。ただし先般の米中貿易摩擦の緩和も手伝って、貨物の見通しについては慎重ながらも楽観的に捉えており、貨物輸送能力は堅持していきます。米ドル高の傾向は2020年も続くことが予想されており、とりわけ長距離路線のエコノミークラスでの競争激化が引き続きイールドへの押し下げ圧力を強めると予想されます。

 

様々な不確実性が混在する中においても、キャセイパシフィックには上質なサービスで定評のある強力なブランド、そして競合他社との差別化を明確にするサービス精神が息づいています。これらの価値は私たちのあらゆる行動の中核を成し、現在直面する困難を乗り越えるための力となっています。

 

企業改革の3カ年計画が強靭で無駄のない企業体質を作りあげるとともに、常に改善を追求する文化を育みながら未来に向けての歩みを刻んでいます。プロダクトと顧客サービス、運航機材への投資は継続して行っていきます。事業環境改善への期待を持っており、2020年中にも新機材の導入を進めながら、市場動向に応じて迅速かつ的確に対応できる柔軟な態勢の維持に努めていきます。燃料効率に優れた最新鋭機を2024年までに計70機導入する計画には変更はありません。

 

これまでも常に、そして現在直面する新型コロナウイルス感染拡大の脅威に対しても、全社をあげ社員一丸となり、プロ意識を持って真摯に取り組んでいます。この極めて困難な時期において、最大限の効率化と円滑な運航業務の遂行に努める社員の献身的な姿勢には感謝せずにいられません。グループとして、お客様と社員、そして70年以上にもわたる運航拠点である香港に対する私たちの揺るぎないコミットメントに変わりはありません。これからも、業界をリードするサービスと世界有数の国際航空輸送拠点である香港の地位向上に向けて多額の投資を継続していく所存です。

2020年3月11日

キャセイパシフィック航空 会長

パトリック・ヒーリー