ストーリーに戻る
キャセイパシフィック航空 2023 年度決算を発表

キャセイパシフィック航空 2023 年度決算を発表

 

2023年

2022年

前年同期比

総売高

百万香港ドル

94,485

51,036

+85.1%

純利益/ (損失)

百万香港ドル

9,789

(6,623)

+16,412

一株あたり利益/ (損失)

香港セント

140.8

(112.4)

+253.2

一株あたり配当金

香港ドル

0.43

- ​ ​ ​ ​

+0.43

​ ​ ​

キャセイグループ(本社:香港、最高経営責任者:ロナルド・ラム)はこのたび、 2023 年度(1〜12 月)の決算を公表しました。決算の発表に伴う、キャセイパシフィック航空の会長、 パトリック・ヒーリーによる声明は以下のとおりです。

 

会長の声明

2023年、新型コロナウィルス感染症によるパンデミックはついに私たちにとって過去のものとなりました。新たなステージを迎えるにあたり、私たちのミッションである「人々の人生を前進させる」ことを第一に考えてきました。お客様、従業員、株主の皆様、そして香港の国際空港ハブのためにキャセイを再建することに主眼を置いてきました。2023年末のグループ目標である、パンデミック以前の旅客便の70%を運航し、香港と世界約80都市を結ぶ目標の達成を喜んでご報告いたします。

2023年の業績が好調であったため、2019年以来初めて普通株主に対する配当金の支払いを発表することができました。2023年中間配当金は普通株1株につき0.43香港ドルとし、基準日である2024年4月5日(金)の営業終了時に登録された株主に対し、2024年5月2日に支払います。当社株は2024年4月2日より配当権利落ちで取り引きされます。

また従業員の献身的な努力での好調な業績により、保有機材、プロダクト、サービスに対する大規模な設備投資に関しても取り組むことができ、2020年に資本増強のために香港特別行政区(HKSAR)から提供された支援の返済を開始することができました。

 

業績

2023年は2019年以来の黒字となりました。これは3年間続いたパンデミックによる旅行制限の後、旅行需要が顕著に急増したことによるものです。この需給のアンバランスは高い収益をもたらし、上半期、下半期ともに好調な業績に貢献しました。

航空会社、子会社、関連会社からなるキャセイグループは、2023年に97億8,900万香港ドルの帰属利益を計上しました(2022年度修正:66億2,300万香港ドルの損失)。2023年の普通株1株当たりの利益は140.8香港セントでした(2022年度修正:普通株1株当たり損失112.4香港セント)。

航空会社および子会社の業績は上半期、下半期ともに好調で、2023年度通期の帰属利益は92億2,500万香港ドルとなりました(2022年度修正:3億3,000万香港ドルの損失)。関連会社の業績は、その大半が3ヶ月前倒しで認識され、通期で15億6,200万香港ドルの損失となりました。(2022年:62億9,300万香港ドルの損失)。

2023年度の帰属利益には、2023年1月にエアチャイナのA株の売出募集完了に伴う持ち分の希薄化により例外的に発生した非現金利益19億香港ドルが含まれていました。

当グループは2023年を通して、グループ全体として営業キャッシュを生み出しており、2023年12月31日時点では利用可能な制限無し流動資産は200億香港ドルに達しています。パンデミック中は不確実性を回避するための予防措置として、流動性を高水準に維持しました。しかし、パンデミックが過ぎ去った今、今後は流動性を下げながらも健全な水準に維持する予定です。この調整は、業界の回復に対する確信と、財務上の義務を果たし続けながら効果的にリスクを管理する当社の実力を反映したものです。

2023年中に、当社は香港特別行政区(HKSAR)に対して総額約19億7,000万香港ドルの優先株式配当を支払いました。当社はこれらの優先株式の買い戻しを開始し、12月に50%(97億5,000万香港ドル)を買い戻し、2024年7月末までにその時の市場と弊社の事業運航状況を鑑みつつ残りの50%を買い戻す計画を発表しました。2020年の資本再編資金調達の一環として香港特別行政区(HKSAR)が提供した78億香港ドルのつなぎ融資枠を利用する必要はなく、つなぎ融資枠は2023年6月8日に期限切れとなりました。

 

今後の見通し

2024年度第2四半期には当社の旅客便数はパンデミック前の80%に達する見込みです。運航便数の回復を続ける中で、2023年度に経験した需給のアンバランスが解消され、ここ数カ月に見られた収益の正常化が2024年を通して続くと予想しています。

当社は、世界の航空業界に大きな課題が残っていることを認識しています。これには、顧客対応に関わる従業員の採用と訓練、サプライチェーンの制約などが含まれます。これらの問題に対処するため、当社は香港特別行政区(HKSAR)の航空業界向け労働力輸入計画の恩恵を受けており、これらの課題を可能な限り軽減するための戦略を実施してきました。

2024年における当社の優先課題は、今年末までに香港国際空港で3本の滑走路が完全稼働する準備を整えながら、高品質かつ持続可能な成長を確保することです。このマイルストーンは、私たちのホーム・ハブである香港国際空港の発展における素晴らしい一歩を示すものであり、多岐にわたる可能性をもたらします。当社は、機材、顧客体験、そして人材に対して投資を行っていきます。

香港は、第14次5カ年計画で示されたように、中国全体の発展において重要な役割を担っています。香港そして他のグレーターベイエリアを主要市場として、キャセイとハブ空港としての香港国際空港の成長と発展に投資を続け、その役割を果たしたいと考えています。

 

感謝の言葉

このような躍進を遂げることができたのは、お客様からいただいたかけがえのないご支援のおかげです。私たちは、お客様のご愛顧と信頼に深く感謝し、今後さらにエキサイティングな展開をお客様と分かち合えることを心待ちにしています。

また、当社の全従業員にも心から感謝の意を表したいと思います。彼らの揺るぎないプロ意識、献身、コミットメントが、私たちの再建の礎となりました。私はこのような素晴らしいチームの一員であることを大変誇りに思います。彼らの懸命な努力と貢献が、当社の業績を可能にしたのです。

 

キャセイパシフィック航空 会長

パトリック・ヒーリー

2024年3月13日、香港

 

 

最高経営責任者のビジネス考察と展望

キャセイグループ最高経営責任者(CEO)に就任して最初の1年である2023年を振り返りますと、再建と投資の2つの重要な点において大きな進展があったと言えます。この1年を通じて私たちは、お客様、社員、そして香港全体に利益をもたらす戦略的な投資を行いながら、ブランド、フライト、ハブ空港の再建に注力してきました。

パンデミックからの再建

2023年における当社の主な目標は、お客様や香港のために、より多くのフライトをより多くの都市へ再就航することでした。2023年末までに、パンデミック以前の旅客便の70%、約80都市をカバーするという目標を達成できたことを嬉しく思います。3年間にわたる新型コロナウィルス感染症の混乱に続いて発生した旅行需要の大幅な増加は、世界的な需給バランスの崩れと収益の押し上げという特異な状況を生み出しました。世界中の航空会社が座席数を増やし続けているため、2024年を通じてこの不均衡は解消され、収益は正常化すると予想されます。しかし、パンデミック以降続いている航空サプライチェーン全体のインフレ圧力による影響は続く見込みです。

旅客便の運航数の増加は、貨物輸送用の胴体下部のスペースを拡大し、お客様により多くの選択肢を提供することで、当社の貨物事業にも貢献しました。2023年末には、パンデミック以前の貨物便の輸送力の85%まで回復し、過去数年間の厳しい状況と比較すると、市場は落ち着いたといえます。しかし、貨物市場は依然として堅調であり、特にEコマースは好調でした。香港は世界で有数の国際航空貨物のハブであり、キャセイカーゴはこのハブを拠点とする最大の事業者です。

パンデミックからの再建にあたり、2023年のグループ従業員数は前年比で約15%、3,000人が増加しました。現在までに、パンデミック時に退職したキャセイグループの元従業員2,000人近くを再雇用し、特に2023年には初めて中国本土で客室乗務員とパイロット候補生の募集を開始しました。2023年の研修活動はパンデミック前のレベルに戻り、2022年の2倍以上の水準となりました。

世界の航空業界は現在も再建の課題に直面しており、当社も同様に影響を受けています。そのため、常に最高のサービス水準を提供することが困難なときもありましたが、私たちはこれらの課題を解消し、継続的な業務の改善を図り、お客様のご期待に応えられるよう引き続き全力を尽くします。

 

将来への投資

2023年は、事業のさまざまな面で戦略的投資プログラムを開始し、保有機材の増強、顧客体験の向上、従業員の評価と報酬に重点を置いて取り組んできました。

機材面では、エアバスA321neoおよびA320neoを32機追加発注することを発表し、既存のA321neo32機の発注を補完する形で、さらに32機を取得する権利を獲得しました。また、エアバスA350F貨物機を6機発注し、今後さらに最大20機を取得する権利を獲得しました。新規発注機体は合計70機以上となり、さらに52機を取得する権利を獲得したことになります。また、中型ワイドボディ機の新規発注も検討中です。当社の機材への投資は、キャセイを強化するだけでなく、香港の国際空港ハブの発展と成功にも貢献しています。

私たちは、あらゆるタッチポイントにおけるカスタマー・エクスペリエンスの向上にも注力しています。2023年には、ほぼ全ての空港ラウンジを再開、お客様に快適で心地よい空間を提供しています。さらに、深センの蛇口クルーズセンターに初の空港外のラウンジを開設し、広東-香港-マカオにいたるグレーターベイエリアにおいてシームレスで一貫したサービスを通じてより高い利便性をお客様に提供しています。

空港ラウンジの強化に加え、機内食とエンターテインメントの向上にも取り組みました。香港の人気ダイニング・ブランドとのコラボレーションにより、本拠地である香港の食の素晴らしさを紹介する特別メニューを開発しました。さらに、当社の機内エンターテイメントはスカイトラックス・ワールド・エアライン・アワードで認められ、2023年度の栄誉あるワールド・ベスト機内エンターテイメント賞を受賞しました。この受賞は、お客様にさらに楽しんでいただけるエンターテインメントをご提供したいという意欲の向上につながりました。

また、従業員の貢献とコミットメントを評価することは、キャセイの重要な企業文化です。最大6週間分の給与を特別感謝報奨として支給する制度は社員からも大きな支持を得ており、2023年には、7.2週間分の給与に相当する新しい利益分配制度を導入しました。

 

キャセイの業績

キャセイパシフィック航空の旅客収益は、2022年比で308.8%増の559億5,100万香港ドルとなりました。有効座席キロ(ASKs)は326.8%増加し、有償旅客キロ(RPK)は396.8%増加しました。2023年度の総旅客数は1,800万人、1日平均49,300人となり、2022年を541.4%上回りました。ロードファクターは2022年の73.6%から85.7%となり、イールドは17.7%減の76.3香港セントとなりました。

一方、キャセイカーゴの2023年の収益は、2022年比で17.9%減の221億6,200万香港ドルとなりました。有効貨物トンキロ(AFTKs)は、旅客便の運航数が増加し、貨物用の胴体下部スペースが増えたため、59.7%増加しました。有償貨物トンキロ(RFTKs)で表される貨物輸送量は、40.3%増加しました。総トン数は19.7%増の138.1万トンとなりました。ロードファクターは2022年の70.6%に対し62.0%となり、貨物イールドは41.3%減の2.74香港ドルとなりました。しかし、このイールドが2019年のパンデミック前より46.5%上回っていることは注目に値します。

パンデミックの期間を通じて、私たちはコスト管理に対して慎重な取組みを続けており、これは2023年においても引き続き優先事項でした。しかし、サプライチェーンにおけるインフレなど、一部の分野では課題に直面し、2023年の燃料費以外のコストは2022年比で51.2%増の523億6,600万香港ドルとなりました。キャセイの総燃料費(燃料ヘッジの影響前)は、運航便数が増加したため、2022年比で106億5,800万香港ドル(または82.4%)増加しました。

2023年、キャセイパシフィック航空は、複数の業界ランキングにおいて、世界のトップ10入りを果たしました。またキャセイカーゴは、エア・トランスポート・ワールド(ATW)の2023年エアライン・インダストリー・アチーブメント・アワードで、カーゴ・エアライン・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。これらの実績は、全従業員の献身的な努力の証であり、世界最高のサービス・ブランドになるという私たちのビジョンに向けた取組みをさらに強化するものです。

 

子会社・関連会社の業績

香港エクスプレスは、2023年通期で4億3,300万香港ドルの利益を計上しました(2022年度修正:13億6,900万香港ドルの損失)。同社は、特にアジアの近距離路線を中心に堅調な旅行需要を受け、2023年12月までに旅客便運航数はパンデミック前の130%以上に達しました。

エア・ホンコンは2023年に7億7,800万香港ドルの利益を計上しました(2022年度:7億7,600万香港ドルの利益)。同社の業績は一貫して堅調です。

2023年において、当社の航空関連子会社の事業は2022年比で改善しましたが、一部の子会社の業績は、取引高の増加にも関わらず支払利息の増加により相殺されたことから低下しました。

3ヶ月前倒しで認識される関連会社の業績は2022年比で改善しましたが、国際路線の回復が未だ不完全であること、国内市場の競争激化、および原油価格と為替レートの変動により、通期では依然として損失を計上する結果となりました。

 

展望

当社は2024年も引き続き再建の道を歩んで行くことを約束します。私たちは、航空業界が直面している課題の大きさが実に重大であることを目の当たりにしてきました。業界、当社とも人材採用、研修、サプライチェーンの不足などの課題に直面しており、当社事業への影響を軽減できるよう最大限の努力を続けていきます。

キャセイパシフィック航空と香港エクスプレスからなる旅行事業については、2024年第2四半期中に、パンデミック前の旅客便の80%に達する予定です。現在は、以前の予測より最大3カ月遅れていることを認識しつつ、2025年の第1四半期中に100%に到達することを目標に取り組んでいます。また、香港国際空港の3本の滑走路の開通によってもたらされる素晴らしいビジネスの機会を見据え、近年の経験から得た学びを活かしながら慎重に責任をもって引き続き再建に取り組んでまいります。

2024年も引き続き、プロダクト、サービス、人材への戦略的な投資を継続します。今後3年間にわたって、新たな座席シートをお客様にお届けできることを大変嬉しく思います。2024年には、長距離路線に導入されているボーイング777-300ERのキャビンのリデザインの一環として、まったく新しいビジネスクラス「Aria Suite(アリアスイート)」とプレミアム・エコノミーを導入します。2025年には、ボーイング777-9型機で世界に誇る新たなファーストクラスを導入します。さらに2026年には、エアバスA330型機のビジネスクラスにフラットベッドを採用した新しいプロダクトを導入する予定です。当社は今後数年間にわたり、ラウンジ、ダイニング、機内エンターテイメント、サービス提供など、顧客体験の継続的な向上に努めてまいります。

当社の貨物事業については、香港およびグレーターベイエリアにおけるEコマースの強い需要が続くと予想しています。しかしながら、貿易における不均衡は続くと予想され、全体的なロードファクターに影響を与えると思われます。さらに、航空貨物業界が正常にもどるにつれ、2024年のイールドは減少するものの、2019年を上回る水準を維持すると予測しています。

あらゆる選択肢を模索しながら、当社の人材採用・育成に対する取り組みは引き続き積極的に取り組んでいきます。2024年には、2023年比で約20%、5,000人の人員拡大を計画しています。さらに、2024年には研修活動を大幅に拡大し、2023年の水準を2倍以上に引き上げる予定です。

 

感謝の言葉

当社のこのような短期間での再建は、実に驚くべきことであり、お客様の多大なご支援と社員のたゆまぬ努力なくしては成し遂げられませんでした。

フライト、貨物輸送、ショッピングに当社をご利用いただいているお客様に心より御礼申し上げます。私たちはすべてのお客様に提供する体験を向上させるための投資を継続し、今後もさらにエキサイティングな発展を皆さまと共有できることを楽しみにしています。

キャセイグループの従業員の皆様へ、最高経営責任者(CEO)就任1年目に、献身的で熱意と才覚にあふれたチームを率いることができ、光栄に思います。皆さんの努力は、私たちの再建の道のりを支える素晴らしい原動力となりました。

ステークホルダーの皆様には、私たちに寄り添い、選ばれる企業となるためのモチベーションを高めていただき感謝しています。私たちは、次なる躍動的な発展の可能性と革新性を実現する時が来たと確信しています!

 

ロナルド・ラム

最高経営責任者(CEO)

2024年3月8日、香港